褥瘡とは、体重などで圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤くなったり、ただれたり、傷ができてしまうことです。

褥瘡の発生予防のためには、身体に過度な圧迫が加わらないこと、皮膚のバリア機能を維持することが必要です。

体圧分散

身体の一部を過度に圧迫しないためには、「圧の再分配」を行う必要があります。

※減圧(圧力を減らす)や除圧(圧力をなくす)ではある部分の圧が減ってもある部分の圧力が増大することが考えられ、最近では圧の再分配へといい方が変わっています。

<臥床時>

寝たきりの方には体圧分散寝具を用います。

体圧分散寝具は主に静止型マットレスと圧切替型マットレスに分けられます。

静止型マットレスは沈み込みや順応性を高めて身体の突出している部分の圧力を軽減します。

圧力切替型マットレスは身体の接触している部位を変えることで接触圧を軽減します。

しかし体圧分散寝具を不適切に使用すると、褥瘡の悪化やADLの低下を招くため、医師や福祉用具専門相談員などとよく相談する必要があります。

体位変換は2時間ごとに行うことが推奨されています。しかしすべての療養者に2時間ごとに体位変換すればいいというわけではなく、使用している体圧分散寝具や褥瘡好発部位の発赤状況などを踏まえて行う必要があります。

体位変換時は摩擦、ずれに注意します。背抜きや尻抜き、足抜きを行い、シーツや衣類のしわを伸ばして圧を分散させます。

また、スモールチェンジ(小さな体位変換)といい、ポディショニングに使用している枕の移動や上肢や下肢の位置の変更、手や顔の向きをかえるなど小さな動きで体圧を変化させる方法があります。これは介護者や療養者の負担を減らすことにつながります。

<座位時>

座位では臀部に圧がかかりやすくなるため、太ももをしっかりと座面に接触させる必要があります。仙骨がまっすぐたち、上肢と下肢が90度になるようにします。必要に応じてクッションなどを用いてポディショニングします。15分おき程度でお尻をうかせるなどして圧力を逃がします。自己にて動けない場合は1時間で他の姿勢にすることが勧められています。

スキンケア

皮膚の角層には外界からの異物の侵入を防ぎ、乾燥を防ぐバリア機能があります。過度の浸潤や乾燥によって角質層が剥がれ落ちると皮膚トラブルを起こします。またバリア機能を持つ角質は0.02mmとラップ程度の厚みしかなく、少しの刺激で傷つくこともあります。

スキンケアの3原則は①保清 ②保湿 ③保護です。

1.保清

入浴環境を準備することが大切です。入浴が困難な方には部分浴や清拭など清潔が保持できるようにします。

低刺激性や弱酸性の石鹸を使用し、よく泡立てて、ゴシゴシ擦らないようにして洗います。

石鹸が残らないようによくすすぎ、タオルで抑えるようにして拭きとります。一日に何度も石鹸洗浄することはかえって、皮膚トラブルの原因となりますので、石鹸洗浄は1日1回程度、その他汚染時は微温湯で洗い流すなどして清潔を保ちます。

また、保清の際にも褥瘡好発部位に発赤や皮膚トラブルがないかよく観察します。

2.保湿

加齢変化によって高齢者の皮膚は乾燥していることが多いですが、保湿習慣がないことも多いです。保湿の必要性について説明し、習慣化できるようにすることが必要です。

保湿剤は様々な種類があり、療養者に合わせて選択します。

保清の後に速やかに保湿します。保湿剤の使用量の目安はティッシュペーパーが皮膚につく、皮膚がてかる程度です。

3.保護

おむつの着用、失禁などにより皮膚が浸潤し、かぶれてしまうことがあります。失禁がある場合は撥水効果のある保湿剤を使用します。療養者にあった排泄ケア用品を選択することも大切です。また、尿取りパットを重ね履きすることはかえって尿漏れの原因となるため、正しく着用する必要があります。

褥瘡部分の摩擦やずれからの保護のためにドレッシング材を使用することがあります。ドレッシング材には創部の保護と、適度な湿潤環境を維持する機能があり、褥瘡の保護にも有効です。しかし、テープを除去する際に刺激になることがあるので注意が必要です。

最後に…

褥瘡は医療処置だけでは治りません。褥瘡の発生要因を除去することが必要です。今回は体圧分散、スキンケアをメインにしましたがその他にも栄養状態、浮腫など様々な発生要因があります。多職種で連携し、褥瘡の予防、異常の早期発見が必要です。

褥瘡の予防について | 日本褥瘡学会 (jspu.org)